〇 新論文刊行のお知らせ
当会の会員で、当会事務所に併設する東北鳥類研究所の由井正敏・鈴木祥悟・葉山雅広各所員の共著である「森林性鳥類の捕食による食葉性幼虫類の食害量の制御」が年末に山階鳥類学雑誌 56巻p119-156に掲載されました。概要は下記の通りです。2019年1月14日の森林・環境フォーラムの講演内容をまとめたものです。
生物多様性が生態系の安定性や生産性に寄与することは草地,森林植生,沿岸域などの実験や調査で報告されている。しかし,森林昆虫の捕食者である鳥類の役割に関するこうした観点からの長期研究はこれまで行われて来なかった。そのため,岩手県内の3ヶ所の森林で繁殖鳥類密度と食葉性昆虫幼虫類排フン量を巣箱架設の有無ごとに10-20年間調査した。本報告はその第一報として,鳥類による幼虫排フン量の制御実態を示す。5-7月に排出される幼虫類排フン量は,鳥類の捕食によって平均70%減少していると推定された。カラマツ林の幼虫類排フン量の変動係数(CV)は,巣箱無しの林より巣箱架設林で有意に小さくなった。排フン量(実測フン量OFA)当たりの食虫性鳥類群集の合計捕食可能量(TPP) が高い森林ほど,排フン量の変動係数(CV)は減少した(下記の図参照)。回帰モデル式の結果を用いた分析では,食虫性鳥類群集のTPP当たりの捕食によるフン減少量は密度依存の機能的反応を示す。結論として,森林の多様で豊かな食虫性鳥類群集は食葉性昆虫幼虫類の食害量やバイオマス総量の減少及びそれらの変動の安定化に,常時大きな役割を果たしていると考えられた。食虫性鳥類による幼虫類捕食効果を大きくするためには,人工林内外に広葉樹や樹洞木を導入することによって鳥類群集の密度と多様性を高める必要がある。森林性鳥類の害虫制御によるカラマツ林の成長量の増加(壮齢期間25年で36%増)については別途報告する予定です。
