社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
自然史科学ミュージアムへの期待
「岩手県立博物館館長」 海妻 矩彦
 岩手県立博物館長に就任して間もなく丸1年たつなかで、3つのことを心がけてきた。1つは青森、秋田、岩手の3県総合博物館の館長と会合を重ねて、合同企画展を開催することで合意、来年6月、図面で描かれた近世北東北の文化、学術、民俗を3県県民に示そうと動き出している。2つ目は現在、進行中だが、自然史系に限らず県内外の博物館を見て回り、博物館が今、どういう状況に置かれているのかを考えている。3つ目は県立博物館の国際化。若い女性解説員の要望を受けて、アメリカに10年以上滞在した岩手大学の非常勤講師を招いて、年13回の英語研修を実施しようとしている。

 次に私の課題を3点述べたい。一つは博物館が抱えている当面の問題、展示のリニューアルだ。地元学情報センターの設立もその一つである。県内の博物館が持っている情報・資料を県立博物館で検索できるデータベースを設け、インターネットに提供する。リニューアルには20億円を要し、4月に骨格予算を計上、次の補正予算が期待されるが、20億円にふさわしい博物館としての成果が期待され、企画内容と入館者の増大が大事になってくる。

 二つ目は自然史系の展示を強化すること。その上でゆくゆくは人文系の博物館と2つの博物館で構成されるような体制を理想としている。岩手は自然に恵まれている割には自然系の展示体制は整備されていない。自然系は金がかかるが、少ない予算を増やしつつ自然系の展示、企画を盛り上げていかなければならない。

 三つ目は入館者を増やすこと。学校では総合学習が導入され、市民レベルでは生涯学習が拡大されている。こうした動きを博物館展示に組み入れつつ、機能強化を図っていく。県立博物館への入場者は開館2年目の20万7千人をピークに下降を続け、14年度は過去3ヵ年を上回る4万2千人と増加に転じたが、15年度も入館者増を維持できるかどうかは難しい。何かを働きかけていくことが必要で、企画が良ければ入館者は確実に増える。最後に付け加えれば、博物館の研究調査活動を活発化ことが、私の課題として妥当なものだろう。博物館を科学研究費の補助金を申請できるような機関にする。研究費助成は2005年で5000億円と2000年実績の倍額が計上される見通しで、それを狙っていく。さしあたり岩手大学と連携、協力を強め、様々な共同研究を進めていきたい。

 県立博物館は日本ミュージアムマネージメント学会に加入した。学会では博物館の新たな役割を求めて、模索が行われており、初期の博物館同士のネットワークづくり、連携強化から、博物館を地域民のコミュニケーション創造の場として位置づけ、新たな連携を重視している。



閉じる