自然環境から生き方を学ぶ中学生たち |
「宮古市第1中学校 教諭」 上野 幸子 |
1.はじめに
私が、植物や動物などの自然環境に興味を持ち始めたのは、小さい頃から男の子と間違えられる事が多かった事から始まります。まあ世をすねたといいますか、いつもひとりで畑や田んぼに出て遊んでいました。
今でも、電話などで私が出ますと男の先生と間違える方が居て、幸子先生をお願い致しますといわれることがよくあります。
人生とは不思議なもので、こんな私でも結婚する事が出来まして、子供にも恵まれています。
そんなわけで、中学校の教諭になってからも、生徒達には出来るだけ自然環境や生物に興味を持たせようと心がけているわけです。
2.中学生という生き物
中学生の年頃は何もかも中途半端な時期であると思います。人格も学力もそして生活習慣もです。そして、ある段階で自分という人間を客観的に見つめ自分に気づくことで自己コンプレックスに陥ったり、性や世の中の難しさも知ります。
自分が欲しいと思う一応のものは持っているが、生活の中に自然(命)が無いことに気づいていない。グルメ食品は加工物が多く、自然食品は殆ど摂っていない。さらには自然環境に直接ふれあう時間もない状況にあります。
3.総合的な学習の時間
以上のような事を考え悩んでいるところへ、「総合的な学習の時間」が出現したのです。
まさに天の啓示でした。下橋中学校としての特色ある学習活動に使わねばならない!生きる力や自ら考え行動できる力をつけてあげたい!と考え、次の3点を重点目標としました。
(1)自分で考える力をつける
(2)考えたことを人に正しく伝えることが出来る
(3)他人の意見を聞きながらディスカッションすることができる
の3点です。
4.具体的な学習内容
中学生には色々な問題点がありました。
(1)自然を知らない
(2)弁当は買い弁が多い
(3)朝食を食べてこない
等です。
そこで、これら問題点をテーマに、中学生と教師とが一緒になって色々考えた結果、総合的な学習の時間をSHEL(シェル)と名付けて取り組むことにしました。
これは「下中で」のS、「人間と」のH(Human)、「エコロジーを」のE(Ecology)、「学ぼう」のL(Learn)の頭文字をとったものでした。
みんなでシェルノートを持ち、直接体験・人との対話・情報などから学んだことや考えたことをその都度振り返り、記録しながら、自ら考える力をつけようとしました。
具体的な学習内容は大体次のようなものです。
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(1)直接体験学習 |
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1年生: |
森林と川の体験(岩手大学演習林でのネイチャーゲームなどを岩手大学の山本先生、森林総合研究所の大石先生たちに、川辺での体験をNPOの方々にお願いして) |
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2年生: |
社会や人から学ぶ(NGO、NPOを班ごとに訪問したりするほか、森づくりとしての間伐体験も) |
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3年生: |
つながりを学ぶ(「森は海の恋人体験学習」として養殖体験や広葉樹の植樹体験などを畠山重篤さんや室根村の方々にお願いして) |
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(2)講演会 |
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全校講演会を年に1回のほか、学年ごとにそれぞれ数回実施。 |
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(3)生徒の自主的な活動(生徒会エコ委員会を中心に) |
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エコ学習会: |
全校でエコ生活などについて学習する。 |
文化祭: |
全校テーマを決めて取り組むほか、環境先進国や環境首都岩手に向けてのシンポジウムを企画。 |
エコ週間: |
環境保全NGO「緑のサヘル」支援募金など。 |
日常生活改善: |
紙類のリサイクルや節電、節水の取り組みなど。 |
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5.中学生の声
学校内での学びや取り組みだけでなく、外への発信もしたいという生徒の願いから、学区内のエコショップをまとめた買い物ガイドを作成したり、新聞への積極的な投稿をするようになりました。
6.大人の責任
以上、教師と生徒が一体になって取り組んできた内容のほんの一部を紹介させていただきました。一応の成果は上げることができたと考えていますが、生徒たちがどうとらえているかが大事だと思い、時々「中学生の意見・感想」をまとめています。
内容を見ると、「学び方(体験・人・情報から)を学び、自ら考える」といった学習目標は大体達成できているように思います。
しかし、これで満足することなく、これからもさらに前向きに考えていきたいと思います。
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