社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
下北半島の自然
人の暮らしの移り変わりとニホンザルを中心に
「下北野生生物研究所研究員」 植月純也
 下北に住んでまもなく4年になります。下北のサルは世界最北端にすんでおります。ニホンザルの尾は6センチぐらいの長さで冬毛と夏毛があります。今の季節、冬は木の皮を食べます。樹皮食いと言いますが、コシアブラやツリバナなどが好物です。また、クズの実やタラの実も好物です。サルが木の皮を食べるとその先から枝が枯れます。このところ暖冬が続き、
また、1970年に天然記念物に指定されましたので数がどんどん増えてきました。春にはブナの花が咲くとまるでブナの実のようにサルが木にぶら下がり花を食べます。

 農家の人が小さいジャガイモや大根の葉を畑に捨てていると、それをサルが食べます。同時にジャガイモやエダマメなどの畑に被害がでます。これが農家のサルによる被害です。我々が調査していると、よく農家の人に怒鳴られます。下北半島のサルが天然記念物に指定されたことで下北の人たちは何もできないと思っているようです。環境の変化やサルの餌付けによってサルが増え、山からあふれて里に来ている。そこに地域の過疎化や高齢化があり、サルを追える人がいなくなった。30年前は300頭だったサルが現在は生息範囲が広がり、800〜1000頭まで増えています。その中で風間浦村、佐井村、脇野沢村が特にサルの被害が多いと言われています。

 環境が人間の考え方に大きな影響を与える。和辻哲郎は著書「風土−人間的」(1935)でユーラシア大陸をモンスーン、砂漠、牧場の三つのタイプに分類しました。砂漠のような過酷な環境下では、優れたリーダーにつかなければ、無事、生きていくことはできない。リーダー選びは優れた者、より優れた者ヘと、少数者に収斂していく傾向がある。これが宗教へ反映されると、唯一絶対神への帰依になっていく。シルクロードは降水量の少ない、青い空と褐色の大地だけ。色彩的に貧弱な状況下では多様な見方は生まれにくい。

 ここではそれぞれの畑を漁網で囲っています。四面を囲うだけでなく、上(天井)まで網を張るとサルは入れないようです。奈良県ではこれをサル用に開発した人もいます。もう一つは塩ビパイプの中にロケット花火を入れてサルに向けて打ち、追い払うものも開発されています。また「山の畑をサルから守る」という本も出ています。これらが広がれば下北での被害も減るのではないかと期待しています。 

 人間がサルに近づくのも問題とされています。サルが人になれることによって、人が近づいてもサルが畑から逃げないことになります。サルに調査で100?の発信器をつけます。サルの行動範囲にいつも人間がいることによってサルが人になれるという問題があります。下北のサルが爆発的に増えています。金華山のサルは7〜8歳で子供を産みますが、下北は3〜4歳で子供を産みます。

 私は畑がサルの餌場でないことをサルに学習させることが必要であると考えます。これからも下北のサルとつき合いながら、サルと人間とがうまく共存していけるようにしていきたいと思います。



閉じる