社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
変貌する国有林の課題と方向
「東北森林管理局青森分局長」 萩原 宏
 現在、材価の低迷他もろもろの事情から、その管理経営に大きな悩みを抱え苦悩する、国有林野事情をつぶさに開示し、今後の管理経営の方向を語っていただいた。

1. 国有林野の管理経営の目標を次の3点に設定した
(1) 国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進
(2) 林産物を持続的かつ計画的に供給
(3) 国有林野の活用により、その所在する地域における産業の振興または住民の福祉の向上寄与

2. 森林の公益的機能の維持増進を旨とした管理経営への転換
(1) 個々の国有林野を、重点的に発揮させるべき機能によって「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」の3区分に類型化
(2) 公益林(水土保全林+共生林)は8割に拡大
(3) 水土保全林については、複層林施業、長伐期施業の推進と、それらを紹介するためのモデル林の設定
(4) 予知予防を視野に入れた治山事業の実施と保全林指定の拡大

3. 森林の流域管理システム下での管理経営
(1) 流域森林・林業活性化協議会等を通じた流域のニーズの把握
(2) 民有林、国有林共通の理念の下での森林計画の作成
(3) 流域を単位とした地元自治体等との意見交換会を実施し、流域の森林・林業の活性化と国有林野の管理経営に反映
(4) 林業事業体の育成整備については、「長期協定システム」による安定的・計画的な事業の発注と、「立木の安定供給システム」による木材販売の推進
(5) 民有林、国有林一体となった「技術交流会」、「林業研究発表会」開催
(6) 試験研究期間や大学との連携による林業技術の開発、普及

4. 国民の森林としての管理経営
(1) 国有林野事業の実施に係わる情報の開示と地域管理経営計画等への国民の意見聴取、そして価値の共有へ
(2) 国民参加の森林づくりに向けた「ふれあいの森」の設定、「巨樹・巨木保護連絡協議会」の設立ボランティアの組織化、分収造林の推進、森林管理署庁舎の開放
(3) 「巨木を育む森」の設定と活用、森林倶楽部・森林教室の実施、インターネットを通じた情報提供、県、市町村とのパンフレットの共同製作、植樹祭のモデルチェンジ等による森林・林業に関する情報・サービスの提供

5. 国有林野の維持及び保存
(1) 松くい虫の防除と山火事の防止
(2) 野生動植物の効果的な保護を図るための「緑の回廊」の設定
(3) 白神山地世界遺産地域におけるモニタリング調査の実施、遺産地域内の実態把握と国民からの意見聴取に基づく保全管理の検証、森林環境教育の場の設定
(4) 管内「レクリエーションの森」の保健・文化・教育的な活動の場としての利用促進

6. 林産物の供給
(1) 資源的制約から収穫量が減少し、間伐主体となっている中での販売戦略の構築
(2) 売れる間伐、利用する間伐を目指した間伐率の向上、伐倒費等の負担や高齢級の間伐
(3) 希少材となってきた青森ヒバの全国ブランド化を目指した委託販売の実施と一千本ストック調査の実施
(4) 随契約制度を見直し、地元工場随契を原則廃止し、一般公売、地域限定公売、施策的随契へ
(5) 木材の利用促進のための、国有林野事業の治山・林道事業等における利用、国の機関等への働きかけ、国民へのPR行事の開催や東北ブロック協議会の開催

7. 国有林野の活用
(1) 土地については、高地価地域に所在する庁舎、宿舎等の特別整備の促進や廃止予定事務所等敷地の売り払いの推進
(2) 林野については「市町村の森」等の公用・公共用等や風力発電用地の売り払いの推進

8. 効率的な事業の実施
(1) 国の業務は保全管理、森林計画、治山等に限定し、伐採、造林等は民間業者に委託
(2) 収穫調査についても指定調査機関への委託

9. 簡素かつ効率的な組織の下での管理経営
(1) 「営林局−48営林署」体制から「分局−11森林管理署、3支署」体制へ
(2) 平成13年8月には22組織(12事務所、6センター、4営林事務所)の廃止を予定

10. 必要かつ最小限の職員数による管理経営
(1) 職員数は、すでにピーク時の1割(1,087人)
(2) 今後と目標達成まで、省庁間配置転換、市町村出向、特別給付金の支給による希望退職等への取り組み

11. 長期的な収支の見通し
(1) 平成16年度以降は、新たな借入金なしに管理経営
(2) 平成60年度末までに約1兆円の債務を処理




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