社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
「日本政府は日本国憲法を守れるか?」
〜地球温暖化問題と関連して〜
岩手県立大学 総合政策学部教授 金子 与止男

 京都議定書により日本は温室効果ガスの排出量を1990年レベルから6%減らすことが義務付けられた。CO2排出量の6%削減を森林に頼るとすると、現在の25倍の森林面積が必要であり、到底実現できるものではない。そこで国で考えている手段として、産業部門や家庭などで0.6%、植林で3.8%削減。残り1.6%は開発途上国でCO2削減のために行っているプロジェクトを日本の削減分として認めてもらうか、海外から買い取るという話も進んでいる。国内におけるCO2削減の具体的取り組みとしては、林野庁では割り箸からバイオエタノールを製造、国土交通省では航空国際線にCO2削減指導、経済産業省では白熱電球から蛍光灯への転換推進といった案が示されている。特に産業部門には更なる削減を依頼しているが、削減技術の開発のための財務予算を要求されているのが現状である。そして時間が経過しての今日、CO2量削減どころかかえって増加の一途を辿っている。

 翻って「温暖化を巡る二つの問い」がある。地球は温暖化しているのか否か?答えは100%温暖化。原因はCH4やCO2なのか?答えは90%以上確実。それゆえしっかりした対策をとらなければならない。IPCCの発表を追って環境省が発表した内容では、温暖化により日本脳炎・デング熱の発生、コシヒカリの減収、リンゴの産地変化、海水温上昇などによる漁場の北上などが指摘されている。また他の資料によれば紅葉の時期が20日も遅くなったとか、国外では氷河の後退といった報道もなされている。

 最後に「気候変動枠組み条約としての京都議定書」についてである。各国は温暖化防止について共通理解を示しているが、京都議定書では差異のある責任が課せられた。日本はCO2吸収源として森林を選択し、現実は前述したとおりである。日本国憲法第92条第2項より、日本は締結した国際条約を遵守しなければならない。京都議定書に違反することは即ち日本国憲法に違反することを意味するのである。




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