社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
「失われていく雪と氷の造形」
〜レンズがとらえた切迫する地球温暖化の現実〜
北上市在住 雪氷造形写真家 高橋 亭夫
 1971年から「雪と氷」の写真撮影を本格的に始めた。当初は御所湖・岩洞湖・川井村を対象にした。主にこれら3ヶ所の定点撮影から、岩手県における温暖化現象は'80年頃には既に始まっており、'90年代には顕著になってきたことが伺えた。

 ここでは、1986年から始めた「冬の北海道の定点撮影による雪氷の変貌」として、北海道の気候と関りの深いオホーツク海氷を紹介する。オホーツク海は、西側の大半は大陸棚で水深が浅い。アムール川から大量の淡水が供給されて海水の塩濃度が低くなり、冬季には海氷ができやすい。流氷は気温-30℃、風速30m/秒の条件下で発達する。例年、流氷は12月頃から東カラフト海流によって南下し始め、北海道の沖合には1月下旬に姿を現す。その流氷は2月中旬から下旬にかけて紋別沿岸に接岸し、時間の経過に従い知床岬の北側沿岸一帯に展開する。流氷はさらに知床岬を通過し、最終的には太平洋側の釧路沖まで南下する。ところが10年位前から流氷がやってくる時期が遅くなってきており、1998年には流氷の接岸がついに見られなかった。かてて加えて、ここ2〜3年は流氷が激減し、オホーツク海の温暖化を伺い知ることができる。また2007年、北極圏において日本の面積の3倍もの氷床が1ヶ月間で消失したとの情報もあり、緯度が高くなるに従って温暖化が顕著であるように思われる。因みに北極の氷の厚さは平均3m、南極は2,500mである。カナダの記録では、過去30年において夏で3℃、冬で6℃上昇したとのことである。

 最後に北東北および北海道における雪氷造形を多数上映し、1986年から定点撮影を実施してきた北海道の、知床ラウスの氷筍、上川層雪峡の氷板・氷瀑、洞爺湖の不凍湖、根室標津のテトラポッド、知床ウトロの沿岸定着氷、摩周湖の氷紋などの映像は、地球温暖化の現実を強く実感させられるものであった。




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