社団法人 東北地域環境計画研究会事務局


公開講演会の紹介
平成8年「植生復元試験」について
「(社)東北地域環境計画研究会専務理事」 下田 一
 小岩井農場は松尾鉱山跡地から流出する強酸水の緩和処理対策として、郷土樹種による森林緑化構想を県に提案した。理由は腐植土の生産、およびその土壌の保水機能を期待したわけである。この提案を実証するため、小岩井農場では過去2回にわたり、植樹試験を行った。

 1回目は昭和57年、露天掘り跡地で実施した。使用した苗木は高木樹種のブナ、ナナカマド、ダケカンバ、低木樹種のアキグミ、ミネヤナギ、イヌコリヤナギである。植樹の方法は「苗木植え」「根株植え」の2つで、それぞれ10本ずつ植樹した。4年後の追跡調査で「根株植え」したナナカマドが約半数、生存していただけで、その他の高木樹種は全滅、低木樹種の生存率も15%前後で、かなり低い数値であった。

 苗が消滅した場所は「客土」した範囲で、外来種の牧草の生育が旺盛であり、このことが苗の消滅を促したと考えられる。2回目の植樹試験は昭和61年に実施した。前回の反省から植樹後に客土した範囲にマットを敷き、外来種の牧草生育阻止を試みた。使用した苗は、高木樹種がナナカマド、ダケカンバ、低木樹種がミネヤナギ、イヌコリヤナギ、アキグミ、タニウツギ、ハマナス、イタチハギである。

 4年後の苗の生存率は、ダケカンバが3割程度、ミネヤナギ、イタチハギ6割前後、その他の樹種は9割以上と高い数値を示していた。以上の結果から外来種の牧草生育阻止対策とポット苗植樹は概ね目的を達成したと考えている。

 2回の植樹試験を受けて、地環研は平成8年7月、露天掘り跡地において「植生復元試験」を実施した。試験地は斜面に沿って2×2メートル平方の方形区を連ね、縦6列、横13行、計78個の方形区を1試験地(幅12メートル、斜面長26メートル、面積312平方メートル)とし、斜面にA、B、C3つの試験地を設定した。

 植樹は1方形区に高木樹種1本、低木樹種2本を配置した。A区にはダケカンバとアキグミ、B区にはブナとタニウツギ、C区にはナナカマドとヤマハギとそれぞれ組み合わせて植樹した。なお試験地の地表を彩るため現地産のヤマハハコとノコンギクを移植した。8年経過した今日、ナナカマド9割強、ダケカンバ、ブナは5割前後、生存している。生長の度合いはダケカンバが2.1メートルと一番高く、最低のブナ0.6メートルであった。鉱山跡地の標高はブナが優占するゾーンに相当するが、現段階では3樹種の中でブナの劣勢が目立つのが気懸かりである。今後の成長の推移に注目したい。

 次に低木について見ると、タニウツギ9割以上生存しブナを圧倒している。ヤマハギの生存率は6割程度で、一緒に植えたナナカマドよりかなり低い値を示している。アキグミの生存は4割で、同じく一緒に植えたダケカンバと拮抗している状態である。地表の彩りを期待したヤマハハコ、ノコンギクの植被はかなり貧弱で、1割にも満たない生存率を示していた。




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